2020.11.20

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【ARROWSジャーナル #5】災害関連死を防ぐためのケア

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いつも私たちの活動を応援いただきまして、本当にありがとうございます。
空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”で看護師/保健師として活動しております佐々木です。

空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”は地震や風水害など災害が発生した直後(災害急性期)から被災地域で活動を開始できるように日々訓練をしていますが、災害発生直後から中長期的な視点も含めて活動していることを少しお伝えできればと思います。

・災害関連死とは
皆さんは「災害関連死」という言葉を知っていますか?

災害関連死とは、地震や津波、台風などによって直接的に負傷し、死に至るのではなく、命は助かったが、避難して以降の慣れない避難所での暮らしや発災前より患っている病気の急激な悪化によって死に至ることを言います。

災害関連死は1995年に発生した阪神・淡路大震災を契機に注目されるようになり、2004年に発生した新潟県中越地震の際に車中で避難生活(車中泊)をする人が肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)を発症し、死亡する事例が増えたことでその危険性が認識されるようになりました。

2016年4月に発生した熊本地震では地震が発生したことによって建物の下敷き等によって直接的な死亡は50名となっていますが、その後の避難生活におけるストレスや持病の悪化によって亡くなった間接的な死亡は217名となっており(2020年6月時点)、直接的な死亡の4倍以上の人が災害関連死で亡くなっていることが分かるかと思います。

 

発災直後の避難所の様子(令和2年7月豪雨)

 

災害によって発生した直接的な負傷者を救命することも非常に重要ですが、その後生き延びた人たちを支えることも重要な災害支援となります。

・生活環境を整えること大切さ
災害関連死は病院や救護所で医療を提供するだけでは十分に予防できないとされており、避難者の生活状況を確認し、場所や物に制限がある中であっても過ごしやすいように生活環境を整えていく必要があります。

私たちはDMATや行政職員、他のNPO職員等と協力しながら避難所や自宅で生活している避難者(在宅避難者)の元を回り、体調の聞き取りを行いながら電気・ガス・水道などのライフラインの状況、水分や食事の摂取ができているか、休息が取れているか、トイレやゴミ等の衛生状況はどうかなどを一つひとつ確認していきます。

 

被災地域内にある自宅を1軒ずつ回り、被災状況を確認する様子(台風15号 2019年)

 

確認する中で困っていることがあれば、その場で解決できる問題についてはすぐに解決しますが、難しい場合は行政に持ち帰り解決するための方法や手段を一緒になって検討します。

・災害関連死を予防するための空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”の活動
空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”では発災直後で避難所の運営に困っていれば、運営支援を行い、避難者からの聞き取りを実施した上で衣類や布団等の物資の不足があれば「緊急災害対応アライアンス(SEMA)」の物資提供の仕組みを用いて迅速に物資支援を実施し、災害によって薬の内服ができていない等、必要な治療が受けられていない場合には診察を実施します。

 

避難所に届いた段ボールベットを組み立てている様子

 

大切なことは災害発生直後からできる限り迅速に支援を実施しながら、被災者に多面的に関わることだと考えています。災害によって一変した生活環境を少しでも改善し、災害に関連した病気の発生や悪化を防ぎたいと思い、被災地での活動を行っています。

文:佐々木康介
空飛ぶ捜索医療団 看護師/保健師

専門は災害・救急看護。現在、大学院で「災害急性期に活動する医療チームに求められる役割」について研究中。

<おまけ>空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”豆知識 No.5

Q:これまでどのくらい出動したの?
A:空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”は、3団体がそれぞれ活動していた時代から数え現在まで51回の出動経験があります。
その中には、台風や地震はもちろん大規模火災や行方不明者の捜索なども含まれます。
また、新型コロナウイルス禍においては、クラスターが発生した病院などの支援にも出動します。

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