2021.01.08

  • 活動報告

感染拡大を抑えて医療崩壊を起こさないために~クラスター支援の現場から、稲葉医師にきく~

空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”チームは2020年12月19日 から広島県内で新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生した複数の医療機関、福祉施設に医師、看護師、調整員を派遣し、支援活動を行なっています。
今回の支援活動では、広島県医療福祉クラスター対応班に入り、県対策チームの一員として活動を行ないました。

東京では一日の感染者が2000人を越え、緊急事態宣言が発令されました。
首都圏だけではなく、地方においてもクラスター発生のリスクは続いており、救急救命を受け入れる医療機関がひっ迫して搬送患者の受け入れをストップするという状況になりつつあります。

今回、クラスターが発生した施設という最前線に医療支援チーム入ったからこそ、現場の課題も多く見えてきました。
今後の感染拡大を抑えて医療崩壊を起こさないためにも、現場に入った「空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”」の稲葉医師からのレポートをお伝えします。



所感

──まずはクラスターが発生施設の現場で感じたことをお聞かせください。
稲葉医師:「現場の医療機関、福祉施設では、通常の業務に加え、感染対策やPPEという個人防護衣(フェイスシールドや感染予防のガウン、手袋など)を着ての活動で、業務が困難を極めています。PPEの着脱やゾーニングというような感染対策ができてない現場では職員の感染リスクも高く、周りからの支援も入りにくくなってしまうのです。施設内部でも疑心暗鬼が起こり、クラスターが発生した当初はパニックが起こり、職員の感染リスクも非常に高くなります。」

──感染対策が十分でないと現場はひっ迫し、さらに支援が入りにくい状況になってしまう、ということですね。
稲葉医師:「感染対策がきちんとできていれば介護士や医療スタッフが感染するリスクは限りなく低くなります。もし利用者や患者に感染が拡大したとしても、対策ができていれば応援職員が入ることができるのです。そこから少しずつ外部の支援も活用して、職員も安心することができるようになります。」

──実際に外部支援が入ったことでクラスター施設の様子はどうなりましたか?
稲葉医師:「『外部からの支援が入ることで施設職員の雰囲気が変わった』『私たちは孤立していないんだ、助けてもらえるんだ、という気持ちになった』という声をいただきました。」

活動内容

──今回、どんな経緯で支援に入ったのでしょうか。
稲葉医師:「クラスター施設の対応には ①物資の支援 ②疫学的な調査 ③現場でスタッフを支え、実際の感染症対策を実施しスタッフに指導する という3つのアプローチが必要になります。当初は県や市、各区の保健センターなどが中心となって対応してきましたが、感染者の急増、クラスターの爆発的増加によってすでにマンパワー不足でした。特にクラスターの発生した医療機関や介護施設でスタッフとともに活動しながらアドバイスができるリソースが不足していました。今回の第三波への対処はすでに災害対応レベルとなっており、緊急事態対処、災害対応の専門家として『空飛ぶ捜索医療団』に要請がありました。」

──実際にどんな支援活動を行ないましたか?
稲葉医師:「『空飛ぶ捜索医療団』の役割は、広島県医療福祉クラスター対応班として、現場でのアドバイスと対策を速やかに行なうことでした。実際にクラスターが発生した施設へ訪問し、状況の確認と、ゾーニングやPPE(個人防護具)の着脱法の指導などの感染対策を現地で行ないました。数日から10日間程度訪問し、現場のニーズに寄り添い、質問に答え、医師は陽性患者の診察や処置も行ないました。状態悪化があった場合には病院への入院調整も行政との連携で行ないました。

──「空飛ぶ捜索医療団 ARROWS」として、その他機関との連携はどう取られたのでしょうか。
稲葉医師:「活動の際には保健センターや市、県との連携が欠かせません。毎日開催される医療福祉クラスター班調整会議での詳細な報告、情報共有とともに、実際の施設訪問においても保健師と同行するなどして連携を取りました。」

──医療崩壊を食い止めるため、今後どのような支援が必要と考えられますか?
稲葉医師:「今回、医療従事者だけでなく、行政関係者、保健センターの皆さんが本当に年末年始を返上して対応にあたられていました。しかし、まだまだ現場はひっ迫した状態にあります。まずは新規感染者を減らしていくことが第一で、そのために一人一人ができることはすでに情報として世の中にあふれています。さらに追加するとすれば、医療現場をひっ迫しているのはコロナだけではないので、1.交通事故を起こさない安全運転。2.薬をちゃんと飲んで持病を悪化させない。3.暴飲暴食、健康に悪いことを避ける。というような基本的なことを心掛けていただいて、救急医療を忙しくしないことが、実は一番大事と思っています。
また、病院の中でもまだ体制が整わずコロナ患者を受け入れられていないところもあるので、少しでも多くの病院で受け入れをしていただけるよう体制整備をしていただければと思います。そのための支援を、行政と、我々のような外部支援者ができればと思っています。」
 


 稲葉 基高
空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”プロジェクトリーダー。国内外で多数の災害医療支援経験を持つ。救急科専門医、外科指導医、消化器外科指導医、集中治療専門医、社会医学系指導医、統括DMAT等の資格を活かし、現場の目線を大切にした活動を心掛けている。

 

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