JOURNAL #202021.07.28

救いたい「一秒でも早く、一人でも多く」に懸ける思い ~代表理事 大西健丞に聞く~

特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)代表理事兼統括責任者:大西 健丞

空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”の運営団体であるピースウィンズ・ジャパン(PWJ)の活動は1996年、イラク北部のクルド人自治区における国内避難民支援から始まりました。

これまでに世界34の国と地域で、紛争や自然災害における緊急人道支援や開発支援を実施。日本国内では東日本大震災以降、ほぼ全ての大災害に出動し、多くの被災者の方々を支援してきました。
私たちが活動を始めてから今年で、25年。
代表理事兼統括責任者の大西健丞に災害・医療支援に対する決意や、私たちが目指すソーシャルイノベーションプラットフォームについて話しを聞きました。

●PWJを設立するに至った想いと経緯
26歳の頃、日本のNGOからイラクの現場に派遣されることになりました。派遣といっても給料はありませんでした。当時、日本のNGOが海外の危険地にスタッフを派遣することは珍しかったのだと思います。
その後、国連との契約をまとめ、何とか難民キャンプにおけるNGOとしての事業が回り出した頃、日本の本部が財政難で解散しなければならないという事態になってしまいました。

このままイラクから撤退してしまうと、支援が中途半端で終わり、自分で人道危機を作り出してしまう結果になると考え、欧米の他のNGOに引き継げるまで何とか事業を継続させたい、そこで作ったのが今のPWJという団体です。
ですから私の頭の中では、引き継げるまでの1年か2年で終わるかもしれないという思いでしたが気付けば25年以上、どっぷり浸かっています。

●なぜ難民支援だったのか?
これまで、国が崩壊してしまうような究極の状況の中で、自分たちの安全を担保しながら、どうすれば緊急支援ができるかということを追求してきました。
その支援先が難民であったり、避難民というケースが多かったのだと思います。ただ難民だけ支援してきた訳ではなく、ホストファミリー、子どもや障害者など様々でした。
いずれにしろ、社会的に弱い立場の人の側に立つということを心掛けてきました。

●2020年から2021年を象徴する出来事は、なんといっても「新型コロナウイルスの流行」だったと思います。振り返って、いかがでしたか?
私たちは以前、エボラ出血熱の対応で現地にスタッフを送った経験などを踏まえ、5年程前から感染症のリスクが世界的に高まることを想定し準備を始めていました。
具体的にはN95マスクや医療用ガウンなどの備蓄を、SARSやMARSクラスの感染症を想定して進めていました。

日本は大規模災害、感染症などに対応する医療チームが弱いと言われています。その中で民間でできること、民間だからできることが必ずあります。私たちは、そこを担いたいと考えています。
その為には災害、感染症に対して多くのシナリオを用意し、戦略・戦術・ファイナンス・人材リソースをシュミレーションしながら準備する必要があります。
残念ながら昨年度は、その一つが現実化してしまいましたが、準備を行っていた分、迅速に支援を展開できたと思います。

●災害医療支援について、今後の抱負と目標を教えてください。
空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”の目標は、より多くの人をより早く救うため、空海のプラットフォームを整備することです。
ヘリコプターが降りられ、患者の応急処置ができる船が必要だと考えています。
さらに医療チームの更なる充実も重要です。医師と看護師の数を増やし、多くの現場で経験を積む必要があると思います。
首都直下地震や南海トラフ地震が発生し、病院の機能がダウンしている中で、我々がどうやって極めて短い時間で対応し、多くの方々を救うためにこれらが必要だと考えています。

●PWJがめざす「ソーシャルイノベーションプラットフォーム」とは、どういうものなのでしょうか?
組織は時代のニーズに対応できないと後退します。変わっていく世の中で、自分たちがそれに合ったソーシャルサービスを提供できているか、は常に考えているべきだと思います。。
「餅は餅屋」と考えずに(そこは大事にしてもいいのですが)、常に世の中のニーズは何か、は考え続ける必要があって。
そのためにたとえ小さなプロジェクトでも実施する意味はあり、そういった意味で「イノベーションを起こすプラットフォームであり続けたい」「国際協力NGOという狭い枠組みにこだわらないでほしい」という思いが込められてます。

私は常にPWJは面白い団体でありたいと考えています。。そうでないと一番大事な「優秀な人材」というものを得られなくなると思っています。我々の最大の財は「人」なので、そこに惹きつけられる優秀な人材に参加してもらうためには、絶対に挑戦してイノベイティブなプロジェクトを作り続ける必要があると思います。

●新しい事業は、「ソーシャルイノベーションプラットフォーム」の考え方のもとで社会のニーズに合わせて作ってきた、ということでしょうか。
ニーズに合わせて作っていくんだけれど、それぞれの事業の相互作用とか、二つあることによって三つ分の効果があるとかいろいろあるので、プロジェクト同士の相性みたいなものを見て、融合させられるべきなら融合させてもいいんじゃないかなと思っています

“集中と選択”だけでやると面白くない団体になって、結局、一番大事な「優秀な人材」というものを得られなくなると思っていて。やっぱり、新しいイノベーションを考えるという姿勢が我々には必要かなと。
我々の最大の財は「人」なので、そこに惹きつけられる優秀な人材を常に手に入れるためには、JOINしてもらうためには、絶対に挑戦してイノベイティブなプロジェクトを作り続ける必要があると思います。

●空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”は、災害支援として立ち上げて、いまは新型コロナの医療支援をしています。それも領域を超えた「Social innovation platform」の効果なのでしょうか。それとも、医療の支援も狙ってプロジェクト化していったのでしょうか?
空飛ぶ捜索医療団は災害緊急支援と地域医療を実施する事業です。しかし、災害緊急支援は毎日続くわけではないので、「普段なにをするか」という問題が出てきます。地域医療は高度な設備がなく高齢化社会の過疎地の中で医療をやっていく。
そしてそれを緊急医療と融合することで、普段は地域医療をしっかりやりながらも、いざという時には世界も含めて即座に緊急医療支援を実施する、という仕組みが人を魅了して、今のメンバーが集まってくれているんだと思っています。
今までバラバラのものだった「地域医療」と「災害医療」、それを融合させてひとつのプロジェクトに挑戦している。イノベーションといえばイノベーションだと思います。

●今の時代におけるPWJの活動を表すキャッチフレーズとは?
「最後の最後まで諦めない」です。弱い人の立場に立つということは言葉でいうと簡単かもしれませんが、実際は難しく、結局見捨てられることもあります。
私たちは見捨てられた人、あるいは動物の側に立って最後まで諦めないという、信念を持って、頑張ってくれればなと思っていますし、難民支援、保護犬事業、災害支援など全てその思いで実施しています。

●最後に、支援者の方にお伝えしたいことは?
私たちは「平和を作っていくことに貢献したい」「世界の平和を諦めない」という若者らしい思いが出発点でした。しかし、いまだにその気持ちは萎えていません。
例えば、難民を支援するだけでなく、さらに「どうやって武力紛争を起こさせないか」、起こっている場合は「どうスピードダウンさせるか」というような、ただの緊急援助だけじゃない取り組みを実施したいのです。
それが「平和を諦めない」というフレーズにつながっています。

「世界の平和、そんなのは夢物語だ」という人はたくさんいます。確かに、非常に難しいというのは、武力紛争地に長くいた自分にはよくわかるのですが、それでも諦めない人たちが人間には必要だろう、と。
それを体現するようなチームに、支援者の方達と一緒になっていきたいなと思います。これからも是非、よろしくお願いいたします。

WRITER

特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)代表理事兼統括責任者:
大西 健丞

1967年大阪府生まれ。上智大を卒業後、英国ブラッドフォード大学に留学。日系NGOのイラク駐在勤務を経て、1996年にPWJを設立。これまで日本を含む世界34の国と地域での人道支援などを指揮してきた。また、殺処分ゼロを目指した犬の保護・譲渡などを行う「ピースワンコ・ジャパン」プロジェクトや、災害緊急支援プロジェクト空飛ぶ捜索医療団"ARROWS"などにも取り組んでいる。

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