JOURNAL #562022.09.20

【ウクライナ危機】看護を通して、心に寄り添うーウクライナ避難民への医療支援ー

空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”を運営しているピースウィンズは、ウクライナの隣国モルドバの仮設診療所にて避難民への医療支援を継続しています。現地での活動は、登録派遣(ロスター)制度により、継続して看護師、医師や薬剤師などの医療従事者を派遣しています。
詳細:https://arrows.red/roster/

7月初旬から約2か月間、岡本美南(おかもと みなみ)看護師がロスターとして、モルドバの医療支援に加わっています。ウクライナから避難してきた人々と、どのように関わってきたのか、インタビュー形式でご紹介します。
 

 
―ウクライナ支援に携わろうと考えたきっかけを教えてください。
以前より、国内外問わず災害医療に貢献したいという思いがあり、国際看護も学ぶため留学し、英語も勉強してきたので、満を持して海外での支援活動に携わりたいと思ったことがきっかけです。また、ウクライナ人の友達がいるため、ロシアの侵攻に伴う現地での人的災害が他人事とは思えませんでした。

―現在行っている活動について具体的に教えてください。
避難民の患者さんだけでなく、場合によっては来院できないご家族の健康についてのコンサルテーション(相談)、バイタルサインチェックや血糖測定を行い、必要時にはプロトコール(標準的な治療法)に則った薬剤提供を行っています。8月からは看護師のみで診療所を運営しているため、状況によって、近隣の家庭医や他の避難所で活動されているNGO団体の医師へ紹介も行っています。

―どのような患者さんが多いですか?
見るからに高度肥満であり、高血圧、糖尿病等の慢性疾患の方が圧倒的に多いです。また、既往歴として、甲状腺機能低下症がある患者さんも多く見受けられます。戦争のため故郷に残っている家族の安否を気遣い、不安や不眠を訴える方も一定数おられます。

患者さんの中には、副作用に出血傾向が挙げられ、本来慎重に処方されるべき血液をサラサラにする薬を、自己判断により薬局で購入して服用していることがあります。他にも医師の診断を受けている場合でも、症状の有無によって薬を飲んだり飲まなかったり、節約のためと勝手に錠剤を割って半分だけ飲んでいたりと「自己調整」をしている方が非常に多いです。
なぜ、自己調整が良くないことなのかをリスクを含め、しっかりと説明し、特に血圧コントロール、血糖コントロールができていないと思われる患者さんには家庭医の受診を勧めています。
 

 
―活動する中で印象に残っていることはありますか?
元々、血圧コントロール不良だったと思われる患者さんが頭痛を主訴に来院されました。来院時、彼女の表情は硬く、何か言葉を発する度に涙ぐまれる様子が見られました。
話を聞くと、戦争によりご家族を最近亡くされていたことがわかりました。看護の見解から、今回血圧が一段と高くなった原因として、メンタル・コンディションも多いに関係していると考えられたため、アロマオイルを使ったハンドマッサージを行いながら、話を傾聴しました。診療後にハグを求められましたが、まだ血圧は高いままで、少しだけ表情が和らいだかなと思える程度でした。

しかし翌日、別人とも思える晴れやかな表情で、「昨日家に帰ったら、血圧もすっかり下がって落ち着いたの、ありがとう」と朝一でわざわざ診療所にお礼を言いに来てくださり、とても嬉しかったです。それから彼女とは、診療所の前で会った時にはハグをかわすようになりました。

―患者の方との関わりにおいての課題や工夫されていることはありますか?
ウクライナ避難民の方々はロシア語を話すので、通訳を介して看護を行っていますが、その難しさを日々感じています。日本語であっても慎重に言葉を選ぶ場面において、私の英語が通訳スタッフを通じ、どのように実際に患者さんに伝わっているのかは分からないので、歯痒く感じることも多くあります。

そのため、「言語の壁=心の壁」とならないように、自己紹介や患者さんへの質問、「お大事に」などの気遣いのフレーズを自分の口から患者さんに伝えられるよう、ロシア語を通訳スタッフから日々習っては、直接患者さんに話すように心がけています。それにより、少しニコッと笑ったり、褒めて下さる方がいらっしゃることは嬉しく、日々の活動への原動力となっています。
 

 
―支援に参加して感じたことや、ご支援の前と後で考え方が変わったことがあれば教えてください。
スタッフ間のコミュニケーションの大切さは、日本の病院で勤務をしている際にも感じていましたが、モルドバで活動を始めてから、その重要性をより強く感じるようになりました。特に通訳スタッフとの密なコミュニケーションは共通理解を深めるためにも大切だと感じています。

―これから、どのような活動をされていきたいですか?
国内外、そして自然災害、人的災害を問わず、超急性期から慢性期、復興期に至るまで、どこに行っても被災者の方々の心に寄り添い、生きる希望となるような看護を提供できる看護師として活動していきたいです。
そのために、今回の支援に不可欠であるロシア語など他言語の習得にも精進していきたいと思います。
また、災害フェーズの慢性期においては、アロマやメイクセラピーなど気持ちを落ち着かせたり、前向きにする効果のある代替療法も看護に取り入れ、少しでも被災者の方々の心を解きほぐすだけでなく、精神的・身体的にも過酷な環境の被災地で活動を続ける「支援者への支援」もできる看護師を目指したいと考えています。

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