JOURNAL #402022.04.20更新日:2024.01.21

異国の地で感じた限界〜ウクライナ避難民への医療支援〜

看護師:北川 光希

私は、4/11にモルドバ共和国に看護師として現地入りしました。
4/7から、キシナウの避難所の一角で小さな仮設診療所の運営を開始しています。

避難所の前には物資供給場所があるため、避難所周辺には連日多くの避難民が訪れます。
仮設診療所に訪れる患者は、「普段飲んでいた薬がなくなった」「眠れない」「血圧が高くて頭が痛い」「風邪の症状がある」「発疹が出た」など様々な症状を訴えます。それぞれ多様な症状を抱えてはいるものの、その根底にあるのは大きなストレスである場合も多いです。
家族を殺された人、家が爆撃された人、家族を残して逃げてきた人もいて、慣れない避難所生活やストレスで病気が悪化する人、新たな病気になる人もいます。

精神的に大きなストレスを抱えている患者の話を聞くにも、ロシア語やウクライナ語の通訳者を介しながらのコミュニケーションに限界も感じています。
限られた時間で十分に一人ひとり話を聞いてあげられないこともあり、無力感を覚えることもありますが、目線や話し方を意識した傾聴・コミュニケーションや、メンタルヘルスの専門家に繋ぐフォローの検討はもちろんのこと、診療以外にも、簡単なウクライナ語を覚えて声をかけてみたり、子どもたちの遊ぶ玩具や綺麗なお花を置いてみたり、良眠作用のあるラベンダーのアロマを取り入れてみたり。
些細なことでも試行錯誤して取り組み、少しでも訪れた患者が明るい気持ちになれるような小さな工夫も取り入れています。

この戦争で多くの人が安全や健康を奪われている中、私たちが活動する避難所には思いやりと助け合いの精神が溢れていて、人々の温かいホスピタリティに日々胸が熱くなります。
モルドバも決して裕福な国ではありませんが、モルドバの人々は避難民を快く受け入れ、現地スタッフは「喜んで避難民をサポートする。」「困ったときはお互い様だ。」と言います。場所や物資を提供したり、ボランティアをしたり、多くの人々のサポートがあって避難所が成り立っています。
また、自身がウクライナからの避難民でありながら、何か力になりたいと声を掛けてくれたり、ボランティアをしている人もいます。
市民レベルで戦争を心から望む人なんてほとんどいないはずなのに、こんなにも人の不幸を生む戦争が起きてしまう現実に心が痛みます。

今後の戦況は読めませんが、オデーサ等のウクライナ西部の戦況が悪化した場合、私たちが活動する地域にさらなる避難民が押し寄せる可能性が高いと言われています。
一刻も早く、人々が安心して大切な人と過ごせる世界になって欲しいと切に願います。
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◆2022年4月25日追記◆
日々の活動で葛藤を抱える中、患者さんと心を通わせる場面もありました。

WRITER

看護師:
北川 光希

神戸市看護大学卒業後、カナダ留学を経て神戸市中央市民病院の救急部門で勤務。その後離島僻地医療や、新型コロナウイルス専門病棟、宿泊療養施設での勤務を経て、2021年9月からピースウィンズ・ジャパンに勤務。

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