JOURNAL #172021.06.10

災害救助犬のもう1つの仕事〜1人でも多くの人を救うために〜

救助犬ハンドラー:大西 純子

いつも空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”を応援して頂きありがとうございます。災害救助犬のハンドラーをしている大西純子です。
今回は捜索活動で私のパートナーである災害救助犬についてお話をさせて頂きます。

私たち空飛ぶ捜索医療団には、地震・台風・豪雨などの自然災害発生時、倒壊した建物や土砂の中に閉じ込められた人の捜索を行う6頭の災害救助犬がいます。
彼らはこれまで国内・海外のたび重なる多くの災害現場に出動してきました。
 

 

実は、私たち災害救助犬の仕事は災害時の捜索以外にもう一つあります。
それは、認知症の高齢者やハイキング・登山などで行方が分からなくなった特定の人を探す仕事です。
日本では、高齢者の行方不明者数が年間1万人を越えており、そのまま発見されないもしくは、発見が遅れて亡くなっている場合もあります。

もともと災害救助犬の発祥は、アルプス山脈で遭難者の捜索にあたる山岳救助隊に同行した山岳救助犬に由来すると言います。
スイスの犬の代表イメージでもあるセントバーナードが、首にウイスキー樽を持っている、あの犬です。体が大きくて寒さに強く、長時間歩くことを得意とするセントバーナードが使われていました。
 


行方不明者捜索中の災害救助犬「ゼルダ」

 
犬の嗅覚は浮遊する匂いをキャッチする能力(エアセント)と、匂いを追跡する能力(トレイリング・トラッキング)に長けています。
災害現場では瓦礫の隙間から漏れ出る浮遊臭の中から人の匂いを探し、特定の行方不明者の捜索には、その人が歩いて行った後に残された人の臭跡を探します。犬によっては、3日後の匂いを追えた犬もいて、かすかな匂いの塵を探すようなものです。
これをTRAILING(トレーリング)と言います。警察犬の捜索方法TRACKING(トラッキング)という足跡追及と似ていますが、トレーリングは地面に残っている匂いだけでなく、浮遊したり壁や木々にや垣根などに付着した匂いの塵なども取ります。

私たちの災害救助犬にも、特定の人の臭跡を追う訓練をしているゼルダとルークの2頭のトレーリングドッグがいます。
 


ルーク

 
 


ゼルダ

 
この2頭は空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”を運営するNPO法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)の本部がある広島県神石高原町内や愛媛県石鎚山での捜索活動での経験があります。
捜索方法は、行方が分からなくなった人の衣服などを借りて匂いを覚え、自宅や施設などいなくなった場所から捜索を始めます。犬たちは、捜索のヒントとなる方向性であったり、その人が落としていった靴などを見つけ発見の一助となりました。
 


石鎚山で捜索活動を行う救助犬「ハルク」

 
この2頭は、週に1~2回山道や市街地などを使って、ヘルパー(要救助者役)が歩いた臭跡を探す訓練をしています。
まず、ヘルパーが自分の匂いが付いた衣類などを残していき、地表の変化(アスファルトから草地など)や屈折箇所も入れて歩いていきます。道ではない場所も入っていくことも。
その後、練度に合わせてスタート時間を設定します。長い時は半日おいて探すことも。(※長く置くときは、ヘルパーは一度車で回収します)
犬たちは、ヘルパーが残していった衣類の匂いと同じ匂いを探していきます。風の向きや強さ、温度・湿度によっても匂いの塵が残され方が違います。
私たちハンドラーは、トレーリングで追っている犬の鼻の様子やリードから伝わってくる引きの強さなどで、犬が今匂いを取っているか否かがわかります。
 


トレーリング訓練を行う「ゼルダ」

 
今、日本では災害時だけでなく、この日常でも起こりうる行方不明者の捜索に救助犬の需要が高まっています。
アメリカでのトレーリングのパイオニアである、元警察官・軍人の講師陣らを招へいし訓練セミナーも開催され、トレーリングドッグが増えてきています。
私たちは、犬の鼻が災害時でも日常でもいち早く発見し、その命を救うことにつなげるために、そして犬の鼻を信じ、そのAIにも負けない嗅覚の凄さに感動し日々の訓練をコツコツと続けていきます。
 

 

WRITER

救助犬ハンドラー:
大西 純子

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