JOURNAL #192021.07.21

災害時に家族や自分がケガをしたらどうする?-洗浄編-

医師:稲葉 基高

皆さんこんにちは。空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”プロジェクトリーダーの稲葉基高です。
先月まで、空飛ぶ捜索医療団は新型コロナウイルス感染症対応に追われる日々でした。
現場では、救急車を呼んでも来ない、病院へ入院できないということがどんなに恐ろしいことか、ということを改めて感じており、
入院できない方の自宅まで往診したとしても、その後の受け入れ先がないため、強い無力感の中で後ろ髪を引かれながらの活動でした。
これと同じ状況が、大規模自然災害の時にも起きると予想されます。
 

 
7月に入り、例年より早く梅雨があけた地域もありますが、今後もいつ大規模自然災害が起きるかわからない状況が続くことから自分の身は自分で守ることが重要です。

前回のジャーナル(https://arrows.red/journal/20201105/)で止血法について説明したのですが、
今回はそれに続いて、怪我の処置のもう一つの鍵となる、「感染予防」について書きたいと思います。
「感染予防」とは、簡単に言うと傷の中での細菌等の増殖を防ぎ感染を成立させないことということになりますが、そのために最も有効な方法はなんでしょうか?
「消毒」でしょうか?

答え「洗浄」です。

おそらく日本の小学校に通った方は、「怪我をしたら水道の水でよく洗いなさい。」と教えられたと思いますが、これが非常に大切な感染予防策なのです。

逆に言うと水の使用を制限された場所での傷の感染予防には、非常に難渋することになります。消毒薬を傷口に塗っても一時的に菌を減らすだけで、またすぐに菌が増殖してしまうからです。

とにかく、流水で傷口についている汚れと一緒に菌を”物理的に減らす”ことが重要なのです。
通常、病院の救急外来などでは「生理食塩水」と呼ばれる滅菌された体液の組成に近い水が洗浄に使われることも多いです。
しかし、日本の水道水は有害な菌が少なく、実際は傷の洗浄は水道水で十分であるという意見もあります。

私の個人的な意見として、特に災害時のような場合には水の種類にこだわる必要はないと考えています。
もちろん、溜まっている泥水などはよくありませんが、流水であれば物理的に傷の表面の汚れを落とす効果はあると考えられます。私も災害時の水がない状況では、飲み水用に持参していたペットボトルの水を患者さんの怪我の洗浄に使ったこともあります。

しつこいようですが,感染予防のためにはとにかく「洗浄」です。
この洗浄は繰り返し行うことが大切です。傷の表面には時間とともに細菌が増殖してきます。可能なら1日2回程度の洗浄を繰り返すのがよいでしょう。
前回の止血法と合わせてシミュレーションしてみましょう。

災害が起こり、何らかの原因で「うで」を怪我してしまい、血が流れているとき・・・
 

 
まずは、慌てずに傷口を圧迫しましょう。出血しているところを見極めて、できるだけピンポイントで押さえます。。この時、血がにじんでこないくらいの強さが必要です。
 

 
しばらく押さえて出血が収まってきたら、流水を探して洗浄しましょう。
 

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水量に制限がなければ、最低2リットルくらい洗浄するのがよいと思います。
血が止まったら怖がらず、落ち着いてよく傷を観察します。意外と小さいことも多いものです。
傷口は清潔なものを探して覆い、保護しておきます。
あまり深い傷でなければ,災害で混乱が予測される病院にあえて行く必要はないでしょう。

ただし,泥の中など汚い場所で大きめの傷を負った場合,多くは「破傷風ワクチン」の投与が推奨されますので,落ち着いたところで病院受診を考えましょう。

 

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いつ起こるかわからない災害時,あなたやあなたの大切な人が怪我をしてしまったら・・・。
コロナ禍だからこそ、万が一の対処法についても、備えておくことが大切です。

WRITER

医師:
稲葉 基高

ピースウィンズ・ジャパン 空飛ぶ捜索医療団 医師 空飛ぶ捜索医療団プロジェクトリーダー 国内外で多数の災害医療支援経験を持つ。救急科専門医、外科指導医、消化器外科指導医、集中治療専門医、社会医学系指導医、統括DMAT等の資格を活かし、現場の目線を大切にした活動を心掛けている。

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