JOURNAL #42020.11.05更新日:2023.12.12

災害時に家族や自分がケガをしたらどうする?-止血編-

医師:稲葉 基高

空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”を応援してくださっている皆様、いつもありがとうございます。プロジェクトリーダーの稲葉基高です。

皆さんは普段怪我をして血がたくさん出ていたらどうしますか?多くの人が病院に行きますよね。では大地震の時にケガをしてしまったときにはどうするのがいいのか、考えてみたことはありますか?

大規模災害時に病院は“災害モード”となっていつもと違う診療体制をとることになっています。より多くの重症救急患者に対応して多くの「命」を救うためです。そんな状況の病院に軽傷の怪我で受診することは、決してよい選択とは言えません。
擦り傷・切り傷など一般的に「ケガ」といわれるものの応急処置の基本は
“止血”“感染予防”。これは全世界どこの病院に行っても同じです。今回は緊急時に自分でもできる”止血法”について、ARROWSコラムを覗いていただいた方に豆知識をお伝えします!

“圧迫”による止血

普段救急外来で働いていてもよく経験することですが、お子さんが怪我をして血が出ていると、慌てて救急車を呼んでしまったりします。しかし多くの場合、病院に着くころには止まっています。
そう、人間の血液には”止血作用”が備わっていますから、多くのケガからの出血は圧迫で止血が可能なのです。この“圧迫”がキーワードです。

傷を押さえるのには抵抗があるかもしれませんが、出血をとめることは重要です。近くにあるきれいな布などで、出血部位を強く押さえましょう。

圧迫止血の様子です。

このとき、腕や足の全体を押さえるのではなく,出血しているところをできるだけをピンポイントで押さえます。タオルなどあまり分厚くないもののほうが、圧迫力が出血部位にしっかりとかかります。ティッシュはちぎれて傷口に残ってしまうことがあるため、他に使用できるものがあれば避けましょう。

止血方法の画像です。

押さえる力の強さは、“押さえていれば布に血がにじんでこない程度”にします。押さえても血がにじんでくるときは力が足りないか場所が悪いので、一度離して血が出ているところを確認してからその場所をピンポイントで押さえてみてください。
腕や足の心臓に近い場所を縛る、という処置はよほど太い動脈が切れていなければ不要ですし、不用意に長時間縛ると手足の血流障害を招く恐れもあるので危険です。

例外的に、深い傷で心臓の鼓動に合わせてドック、ドックとリズミカルにたくさんの血が出ている場合は、動脈損傷が疑われるため、圧迫+心臓側を縛ることが有用な場合があります。もちろんこの場合には軽傷ではありませんから、急いで病院に行ってください。災害モードの病院でも優先的に処置すべき状態です。

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今回は緊急時の止血法について紹介しました。実際には”感染予防”の基本である「洗浄」とあわせて行っていくことになります。長くなったので洗浄についてはまた次の機会に!
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おまけ|空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”豆知識 No.4

Q:空飛ぶ捜索医療団”ARROWS”のスタッフ、普段は何してるの?

A:医師は週に一回、神石高原町のクリニックと病院に診察支援してます。

神石高原町での勤務時の様子です。

 

レスキュー隊員は事務作業に訓練、事務員は各地の訓練に参加などしてます!

レスキュー隊員の訓練参加時の様子です。

WRITER

医師:
稲葉 基高

ピースウィンズ・ジャパン 空飛ぶ捜索医療団 医師 空飛ぶ捜索医療団プロジェクトリーダー 国内外で多数の災害医療支援経験を持つ。救急科専門医、外科指導医、消化器外科指導医、集中治療専門医、社会医学系指導医、統括DMAT等の資格を活かし、現場の目線を大切にした活動を心掛けている。

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